第10章 落魄
「とぼけなくてもいいんだよ。
カズが雅紀から聞いたんだ……」
「お袋が……、智に何を言ったんですか?」
「だから、そんなウソ臭いとぼけをする
必要はないって……
お前が言ったんだろう?
そのケガは自分の不注意だから、
智さんは何も関係ないって……」
「言いましたよ。でも、それは……
智をこれ以上巻き込みたくなかったから……」
「ふうん~…。巧い言い逃れじゃないか………。
巻き込みたくなかったから関係ないか。
表面的には体裁も立つし、
その上、智さんとの関係を白紙にできて
一石二鳥だってことかぁ~」
翔の言動を逆手に取るような潤の態度に
目を剥いた岡田は潤に食って掛かる。
「おい!!何だよあんた……!!!その言い方ーー!!」
声を荒げたものの、翔に2人だけで話したいから
と諭されると、渋々ながらその場を外した。
「何かあったら、俺を呼べよ……。」
と、何度も何度も言いながら……。
それを潤は、フンと鼻で笑い飛ばした。
「いいご友人がいるじゃないか……。
恋人の1人や2人いなくなっても
寂しくもなければ、いくらでも逃げ場は
あるってわけなんだ。」
どこまでもふざけた潤の態度に
翔は足を庇いながら立ち上がる。
「潤さん、俺はあなたみたいに駆け引きが
得意なわけじゃないんです。
遠回しに言わないで
何があったかハッキリ教えてください。」
「そっかぁ~じゃあ、単刀直入に言うぞ
お前たちのせいで、俺が楽しみにしている
カズとの夜の夫婦の営みが危機なんだ。
なんとかしろ!!!!」
「………………」
しばし翔は考え込んでしまった。
「?……直接すぎて、
全然意味がわかりません…。」
「わからない?智さんが失恋のショックで
食事も喉を通らないぐらい参ってる…
それが、非常に迷惑な話し、
カズに完全にシンクロしちゃって
一緒に落ち込んでいるんだよ!」
「失恋って…?」
「翔がフッたんだろう⁇」