第10章 落魄
「俺は、この足がちゃんと動いてくれれば
それ以上は望んでいません。」
「あ…、う……うん、
……も、もちろんそうだよ…」
何気に話を逸らされて
またよけいなことを言ってしまったと
気がついた岡田は
慌ててうつむくと、まだキズ痕の残る
足に目を落とした。
ーーーその時ーーー
「へぇー……やっぱり体育会系ってのは
ホモ臭いんだー。」
背後で響いた、
思いっきり小馬鹿にしたような声は?
「……潤さん……?」
振り返った翔は、少々意外な人物の姿に
目を見張った。
「智さんからその男に乗り換えたってわけだ。
守備範囲がひろいんだなぁ~翔は……」
ビシリと背広で決めた潤は、
濃ゆい顔に甘い声音で、辛辣な冗談を
言ってくる。
「智さんの頑固のおかげで、
こんなひどいめにあったんだ。
恨む気持ちは理解できる。
ちょうどいいタイミングで、
これ幸いとばかりに、縁を切りたかった
気持ちもわかるけど……
代わりに選んだ相手がそいつなんだ……。」
純粋に手助けをしてくれている岡田と
必死にリハビリに励んでいる翔に向かって
「まぁ…俺としては今までよく我慢したと
感心してるぐらいだけど……
でも、母親を利用して別れ話をさせるってのは、
正々堂々のスポーツマン精神に
欠けてるんじゃないかと思うんだけどなぁ~
せめて本気で愛していたんだったら
最後通告ぐらい自分でしてやることが
優しさってもんだぞ。」
と、智が必死で隠していたがっていたことを
ボロボロと口にしてしまう……。
「何のことですか?」
翔は、怪訝な視線で潤を見上げる。