第10章 落魄
グラウンドでサッカー部員が
練習をしている時
翔は岡田の手を借りて
ストレッチに励んでいた。
「よしよし。太股や脹脛の筋肉は戻ってきた。
やっぱり鍛え方が違うんだよなぁ~
この調子なら、予定より早く復帰できるぞー」
と、我がことのように喜んでくれる岡田は
4年生だから夏の大会が終わった時点で
部からは手を引いているのに
翔をだましたことへの罪滅ぼしのためか
延々リハビリを手伝ってくれている。
単純だが悪い男ではないのだ。
一方、伊野尾は、さっさとマネージャーを
辞めてしまっていた。
今となってはどうでもいいが、
結局の話、伊野尾は何が望みだったのだろう?
と、翔は思う。
人を好きになる気持ち……
諦められない気持ち……
手段を選んでいる余裕もなく欲しかってしまう
気持ちもわからなくはないけど、
そのあげくが、興味を無くしてしまった
玩具を放り出すのと同じように
簡単に投げたしてしまえる
中途半端な気持ちは到底理解ができない。
人間、その程度の思いつきで
あんなメチャクチャなことを
やってのけるのかと信念の強い男には
困惑するばかりだった。
同じように翔と智を別れさせようとしていた
岡田は、今は、額に汗をかきながら
マッサージをしてくれている。
二人の動機もその後の対応も大違いだと
翔は思った。
「俺はさ、マジメにお前に期待してたんだ。
今度のことでクラブチームとの契約はお流れに
なっちまつたけど……
もう一度チャレンジしてほしいんだよ。」
岡田の本心からの期待だと思うが
当の本人からしてみたら
ちょっとばかりよけいなお世話だった……