第10章 落魄
智が逢いにいかないことが全ての答えだと
翔はちゃんと察してくれているはずだから……
翔は被害者で
自分はそれを引き起こした元凶なのだ。
もう2度と対等の立場には戻ることはない。
頑固者で、年上のブライドのある自分が
負い目を感じながら、恋愛をしていくのに
堪えられなかったのだと
そう思ってくれるだろう。
いいや、そう思ってくれればいい…………。
そうして、あの息子想いの両親や
穏やかな弟や
可愛い妹を大切にして
いつか、家族の自慢の長男になって
くれればいいのだ。
それがきっと一番いいことなのだ
「そう、それでいいんだ……」
と、呪文のように唱える智だったが
その時は気づきもしなかった。
大野でもなく、相葉でもなく
智に嫌われことを恐れず
当然『許さない……』『死んでやる……』
なんてそんなこと屁とも思わず
己の都合だけで、よけいなお節介を
焼いてしまう男が一人だけいたことを…………