第9章 夢浮橋
「俺だって……まだ、納得できない部分が
あるんです……。
だって……子供じゃあるまいし、
恋人って言う以上……その、あれでしょ?」
と、何やら言い淀む修だか、
智はすぐに意味を察した。
「はい。俗に言う、大人の付き合いって
ヤツをしたりも……。」
「……やっぱり……」
さすがに高校生には刺激が強すぎたのか
不快の色を隠し切れず
修は顔を歪んだ。
「ショックだよなぁ~それは。
兄貴は、それなりに身体もできてるし……
そういう意味ではとことん、男っぽいヤツだと
思っていたのに……。」
ガックリとうなだれると、
修は両手で頭を抱えた。
「あのぉ~…弟君……?」
「どこで、そうなっちゃったんだろう?
俺、それだけは納得できないんです。
翔が男に抱かれるっていうのが……」
「あのぉ~……
何か激しく勘違いしているんだけど……」
「え……?」
「女役は…俺です。」
「……え…?」
「翔はまったくノーマルだよ。
以前は、けっこうサッカー部の先輩の奢りで
風俗とかにも行ったこともあるらしいし…
ちゃんと女の子の相手もできるんだよ。」
「………………」
修は、穴が空くほど智の顔を見つめると
ようやく意味がわかったのか………
「ええっーーーー!?」
と、腰を浮かせるほど仰け反った。
「で……でも、先生でしょ?
年上でしょ?」
「ハハっ……7っ年上だけど…。
まぁ…姉さん女房だと思ってくれれば
わかりやすいかなぁ…」
「はぁ…………」
気が抜けたように修は再び椅子に腰をおろすと
思いっきりながぁーい安堵の溜息をついた。
「よかったぁ~」
どうやら、同じホモでも、受けと攻めとは
天と地ほどの差があるらしい。
まぁ…それも当然のことだろう……。