第9章 夢浮橋
これが挿れられなければダメだとか、
女装の趣味があったりだとかじゃ
かなりの深刻な問題になってしまうが……
女も抱けるってことなら、今は智に夢中でも、
熱が冷めれば軌道修正することは
可能なのだから……
「ちょっとは安心したでしょう。
翔の場合、一過性のものかもしれないと
わかれば……」
「……え…?いえ、そういう意味じゃ……」
「いいんだよ。わかってるから……。
俺だって、ずっと続くなんて思ってや
しなかったから……。
ノンケはいずれ女の方がいいって言い出すから。
その上、翔にはサッカー選手になる夢もあるし…
優しい家族もいる。
いつかきっと目が覚めるだろうって
思っていたから……」
「先生……」
「こんな形でバレたのは、むしろよかったのかも
しれない。
親御さんにとっては、同性だからってこと以上に
俺は許せない理由ができたんだから……
大事な息子にケガをさせたヤツってことで…」
「でも、実際にケガをさせたのは、
武井という教師だと……
五十嵐の生徒会長から聞きましたけど……」
「雅紀が……?」
ようやく智は、雅紀を残してきたことに
気がついた。
雅紀は、このいかにも人のよさそうなで
話の解りそうな人にちゃんと説明を
してくれたのだろう。
そう、智が悪者にならないように最大限の
配慮をして…
そして結果が、すべての罪を武井に
押しつけようという雅紀の考えなの
かもしれない。
まぁ…事実、直接の原因は武井にあるのだが……
それだけですむ話じゃない事は
智だってわかっている。
「大きな原因は俺なんです……
俺がバカだから……
翔をこんな目に合わせてしまった……。」