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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第9章 夢浮橋






どれだけそうしていただろう?

「大野先生……」

突然、翔の声に呼ばれたような気がして
智は顔を上げた。

「……翔………………?」

だけど、泣き濡れた目が据えたのは
翔ではなかった。

「すいません……。

先ほどは母が失礼なことを言ってしまって……」

智の前に立ち、礼儀正しく頭を下げていたのは
修だった。

「翔の手術が終わって、今さっき集中治療室に
移されました。」

「ホントに……?」
「はい。まだ麻酔が効いてて話は
できなかったけど……」

「ケガは……?」

「出血のわりにはキズは浅いそうです。
大事な神経もキズついてないそうです。」

「サッカーは……?
元通りサッカーができるように
なるんだよね……。」

「まだ、なんとも言えないそうです。
でも、希望はあると言ってました。
プロの選手だって、散々ケガと闘っているんだし
膝にメスを入れる場合もあるって……」

「希望はある……?」

いい意味と取るべきなのか、
それとも慰めと取るべきかなのか?

だけど、あの翔の事だから……
どんな辛いリハビリにだって堪えるだろう。

まったく元通りにならないと
言われたわけではない以上、きっと奇跡を
起こしてくれる。

そう……希望はあると、
そう思いたい……。


「翔は頑張り屋だから、きっと復帰します。」
翔とよく似た声が、翔のことを語る。

なんだかそれが、翔の決意のように思えてくる。


「隣…いいですか?」

「どうぞ…」

ゴシゴシと両目を拭いながらも
隣へと促す。

確か…翔より三歳下だと……
聞いたような…

超有名な一貫校でラグビーをやっていて
オリンピック候補にも選出され
海外遠征なども積極的に参加していると……。

翔も年齢に比べて大人びていると思っていたけど
修の方が高校生だけど、人生経験が豊富な為か
大人びて見えた。




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