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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第1章 新たな始まり



「智さん……、それ…
可愛すぎだよ……。」

翔は困ったように顔をしかめても、
焦る様子はいっこうにみせなかった。

「お、おまえ…
俺を、バカにしてるのか?」

「違うよ…。」

「もういい!お前なんか嫌いだっ…!」

心ない言葉ばかり、飛び出してくる。
誰かに甘やかしてもらいたい…
朝から晩までメロメロにして
欲しい…………。

だけど…………
年上のプライドがあるから
年下の翔に素直にそんなこと
言えやしない。

智は、いつも相手が察してくれるのを
指を咥えて待っているしかないのだ。

そんな自分が本当に情けなくて……
イヤになる。

「な、なんで俺が、お前なんかに
踏みつけられて、喜ばないと
いけないんだよーーーーーー…!?」

と、翔の胸を弱々しく叩く。
実際には踏みつけているのは

誰が見ても智の方だと思う。
それが、智の被害妄想的な
悪いクセなのだ。

すぐに、こいつは自分を
貶めているんだと思いこみ
そんな奴は許さないと
涙で潤んだ両目は、決して閉ざさず
翔を見ている。

男同士の恋の不毛な結末を
知っているからこそ、
不安に怯えて自暴自棄になるより

いっそ切り捨ててしまった方が
マシだと…

隙のない意志でもって
見開かれた瞳は鮮やかの一言だった。

こうなれば、強い意志を持った
頑固者の智に魅入られてしまった翔は、
もう降参するしかない。

「智さん……ごめん…………。」

紅潮してより妖しい魅力を増した
智の頬に手を伸ばす。

「踏みつけてなんかないよ。」

翔にとって、ゲイの智の気持ちは
どうやってもわかりはしない。



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