第8章 魅惑な美
「開き直るんだ…。
すごいなぁ~先にウチの屋敷に不法侵入して、
智さんをさらっていったのは
誰かなぁ?」
「……何……」
「脅しはこっちの十八番なんだよ。
他人の恋人を寝取ろうとした不埒な
ゲイ教師としてクビになるか、
お互い黙って穏便にすませるか?
バカなあなただって、
そのぐらい、どっちが自分の為になるか…
わかりますよねー。」
「……………」
武井は、ガックリとその場に座り込んだ。
「お…俺は、誘惑されただけだ……。
この魔女が…外に出たいって言ったんだ…。
誘ったのだって、こいつの方だー!!!」
だが、ようやく捻り出した武井の言い訳を
智は冷ややかな言葉で、蹴飛ばす。
「だれが魔女だって?
じゃお前はストーカーだな……
先にストーカー行為をしたのは、
お前だろう?」
「え……?」
「お前が送ってきた脅迫状、
ちゃんと取ってあるよ。
出るところに出て調べてもらおうか?」
そう言って、智はゆっくり視線を
デスクの方に向ける。
パソコンの横に置いてあるプリンターに……。
「そのプリンターで印刷したんだろ?
たぶんね……。」
「-----!?」
「俺をどうにかできるって本気に思って
たのなら甘すぎるよ……。」
「………な………」
そうして武井は、ようやく気がついたのだ。
本当に自分は道具でしかなかったのだと………。
智は最初から翔を試すためだけの為に
屋敷から姿を消したのだと…。
今、翔の腕の中に身を浸している智の全身から
溢れね幸福感が、それをしっかりと
物語っていた。
「俺は……ピエロか……?」
その程度の役割でしかなかった……。
ヨロヨロと立ち上がった武井はだったが…
次の瞬間……
カッと目の色を怒りの色に染めたーーーー。