第8章 魅惑な美
「翔に対する見せしめでしかないんだから…。
二度、三度はないよ………
そもそも、そんなにやる必要もないんだから…」
「………な……」
「でもね………
最後にもう一度だけ忠告してあげる。
ふふ…俺は麻薬だよ。
一度味わったら取り憑かれたようになるよ。
他の男でも女でも代わりなんか
いないんだから……
明日から抱いたことを後悔する日々が
始まるかも知れない………。」
冷酷な微笑みを浮かべ、智は笑う。
「俺は優しいだろう?
お前みたいな男にも、
最後の忠告をしてやってるんだから………。」
その目はありありと軽蔑の色が浮かんでいた。
「ちょっと待ってくださいよ………。
お…俺何かしましたか?
大野先生に恨まれるようなことしましたか?」
「……しただろう………?」
「………え……」
「せこい手なんか使わずに、
真剣にぶつかってくれば少しは本気で
お前に寄り添ってやったのに………
つまらない脅迫状なんて
送ってくるからだよーーー。」
「-----!?」
瞬間、武井の顔がザーーーッと青ざめた。
「な……何を………!?」
「最初は翔のファンかと思ったんだけどね
まさか、お前だったとは………。
俺を不安にさせて、その心の隙に自分が
入り込もうと画策したの?」
「………………!!」
ゴクリと、武井は息を呑んだ。
「俺に送ってきた脅迫状、
さっきのプリンターと同じプリンターで
印刷したんだろ?
どっちのプリントも二箇所ほど同じ場所に
印字の掠れがあった。」
「そ…そんな、印字の掠れぐらい、
どこのプリンターにだってあることだろう。」
「そうだなぁ……
でも、まったく同じ場所につくことは
あり得ない。
お前、俺が美術教師だってこと忘れてないか?
それも大学ではデザインを専攻してた。
絵描きの目をバカにしないでもらえる?」