第7章 雲隠れ
それもその通り………
4日前、智の行方がわからなくなった時
翔は真っ先に和也のマンションに向かった。
が、そこが留守だとわかった瞬間、
これはもう相葉の家しかないと………
確信して訪ねたのだ。
ところが、出できた執事とやらに、
丁寧な口調で追い払われてしまった。
その時に………
『智さんは、大野のご実家にお戻りです』
と、こっそり教えてくれた。
だからここに来たのだ。
中に入れてもらえないのは覚悟の上ではあったが
智也や達也が、家から出入りするたびに
翔に智の様子を聞かせてくれた。
智がどれだけ怒っているか………
寂しがっているか………
泣いているか………。
そして、最後には決まって
『もう、終わったんだよ!!さっさと諦めろ!!』
と、そう聞かされるたびに
自分の愚かさを再確認して、
心がズキズキと痛んだ。
この場に立ち続けるしかない。
智が、自分を許し、姿を現してくれる
その日まで………。
たとえ、雨が降ろうと槍が降ろうと………。
何日でも………。
「おい!雅紀!!ここにいないって……
どういうことなんだよ?
だって、今朝だって、
智也って兄貴が出て行く時に
『智はまだ、お前なんか許してない………』
って、言ってたぞ…。」
「だからそれは、
まんまと騙されていたって事だって…。
ウチのバカ親父と、大野のバカ兄貴が
口裏を合わせて、智さんがこっちにいると
思わせていたんだよ。」
「------!?」
ようやく事情が呑み込めたのか、
翔の顔に怒りに似た驚愕の色が
広がっていった。
「お、俺は、だまされた…のか……………」
「ホント………
少しは人を疑うことを学んだ方が
いいよ………。」