第7章 雲隠れ
「逢ってもらえなくてもしょうが
ないんだ……。」
「………。」
「でも、雅紀……
俺は諦める気はないんだ。
智に気持ちが通じるまで、ここで何日でも
待つ覚悟はできているんだから…。」
この炎天下に4日間、ひたすらに智を
待ち続けた翔は、少々へばってはいても、
めげてはいなかった。
「気力だけは十分あるみたいだけど………
空回りしてない?」
「そんなこと…」
「翔先輩?夏休みはクラブチームの練習に
参加していたんじゃないの?
そっちはどうしたの?」
「もちろん、断った。
もう練習どころじゃないから」
「そう、断ったんだ………。
もったいない………。」
「智の方が大事に決まってるだろ!!!」
「プロのサッカー選手になるのが
夢じゃなかったの?」
「今回は不測の事態が起きたから、
戦線離脱したんだ。
それで、向こうが俺を不要と判断するなら、
しょうがないことなんだよ。」
「はぁ~…そんな簡単な事なのかなぁ~」
と、雅紀は肩をすくめる。
そうだなぁ……恋は盲目?
バカにつける薬はない?
どっちが正しいんだろう…。
まぁ…わかっていることは、やっぱりこの男は
ヘタレってことなんだ。
「健気だとは思うよ。
だけど、何日も待っていても
翔先輩の気持ちは通じないし………
たとえ1ヶ月待ち続けて熱中症で倒れても、
智さんは出で来なくって、
あなたは自宅に強制送還されるだけだよ。」
「え…?」
「智さんはここにはいないんだよ!」
「………何………?」
翔には、雅紀の言っていることの意味が
わからなかった。