• テキストサイズ

もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第7章 雲隠れ



「その通りだよ。
だから、俺を助け出せよ。

そうしたら、お前のことちょっとは
信じてやってもいいよ………。」

ここは本当に居心地のいい檻。
この中にいれば、智は決してキズつけられることはない。
大事に守られて、可愛がられて、
欲しいものは何でも揃う。

(あっ翔だけはダメだったけどね………。)

だから、ここでヌクヌクと微睡んでいることは
智の最高の幸せなのかも知れない………

だけど、ここに居たら一番大事なものは
ないからー…。

「俺を連れ出してくれ……
そうしたら、お前の欲しいものを
あげるから………」

「それって……」

「そうだなぁ……
一度ぐらい抱かせてやってもいいよ」


と、武井を煽る。



「………ヤケになってる?
そんなつまらない賭けはやめた方がいい
ですよ。」

「怖いの?それとも、無理ってこと?

だったらいつまでも、そこで指を咥えて
見てればいいんだよ。」

武井は智をジッと見つめると
長い沈黙の後静かにうなずいた。

「わかりました。
その言葉、忘れないで下さいね………。」

武井は、何事か決心すると、
両手をブンブンと回し始めた。

「三㍍ってところですね。」
よじ登るにしても、手がかりになるような
横の桟はかなり上にしかなかった。

武井の身長は185㎝ぐらいだから、
手をいっぱいに伸ばしても
1㍍はジャンプしなければ無理だろう。

「垂直飛びで1㍍か…頑張りますか………。」

大きく身をかがめて、一気に飛び上がった。

その瞬間、さすが動物に似てると
感じさせるほどの巨体が軽々と空を舞った。

いっぱいに手を伸ばしギリギリのところで柵を
掴むと、つま先で柵を蹴り、
まるで体操の背面車輪さながらに
グルリと回転して、そのまま柵のこちら側に
飛びこんできた。

芝生に立て膝をついて、けっこう様になる
ポーズで降り立った。

「わぉっ~かっこいい!」

バカにしきっていた智が
思わず驚きの声を上げた。









/ 238ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp