第6章 姑息な悪だくみ
その頃……
智は、案の定と言うか……
まぁ…一番お手軽で快適な隠れ家と言うと
行き着く場所はここしかないだろう……。
相葉の屋敷にいた。
本当は和也のところに転がり込みたかったのに
潤と侑李の三人で、初めての旅行に出かけていて
留守だった。
で……しょうがなくやってきたのが
相葉の家なのだ。
雅紀は夏休みの間、海外でバカンス中……
今年はオーストラリアに行っていると
聞いていた。
叔母様も仕事が忙しく、海外を飛び回っている。
奥様も息子もいないお屋敷には、
休暇など無縁の『相葉グループ』会長
相葉勝久だけがポツリと取り残されているだけ
だった。
今日は早々に仕事を切り上げて帰宅をし
自分の自室のある二階の奥の部屋で
ミルクをたっぷりと入れたコーヒーを飲みながら
ターンテーブルを回しレコード盤に針を落とすと
アンプから流れてくるのは60年代の流行った
懐かしい名曲だった。
相葉グループは、傘下企業総数は300社以上
総従業員も何十万といる、日本いや世界に誇る
巨大コンツェルンの長なのだ。
そんな男だって静かに自分を見つめ直す時間が
必要なのだ。
忠実な使用人達は、主人からの指示がない限り
一人の時間は邪魔しない。
だが、唯一の例外は目に入れても痛くないほど
可愛いがっている甥っ子の智だった。
その智が、半べそ状態で勝久の元に
飛び込んできたのだ。
そんな嬉しいことはないのだ。
それから、二時間……。
智は勝久に向かって泣きべそ顔で
翔への恨み辛みをこぼしていたのだ。
たとえこれが朝まで続こうが勝久は平気で
耳を傾け続けるだろう。
たとえ血は繋がらなくても、生まれた時の
その愛くるしい顔は今でも忘れられない。
ずっと愛し、庇護し、見守り続けてきた
甥っ子なのだ。
その愛しの智が、涙に潤んだ目で見上げ
甘えるように服の裾を引っぱったしてくるのだ。
こんな幸福の時間を、
どうして手放すことができるのだろう。
(もーどうして、智はこんなに可愛いのだろう!!
私の大切な智♡)
甥っ子の頭を撫でながら、
愛おしそうに見つめる目はただの変態オヤジだと
思う。