第6章 姑息な悪だくみ
悲痛に歪む智の顔が浮かぶ。
『お前とのことが知られれば、
責任を取らされるのは俺なんだぞっー!』
物哀しげな表情での訴えを、
上辺だけで理解したつもりでいた。
五十嵐学園では智は絶対的存在の
アイドルだったから
あの可愛い人を攻撃する命知らずの
人間がいるなんて
恋に目の眩んで、盲目的な恋をしていた
翔には想像外のことだったのだ。
翔は携帯を取り出して、
智の番号をタップしてみたが、
すでに電源は切られていて無機質な音声のみ
聞こえてくる。
何度かけても、繋がることはなかった。
「サイテーだ……俺は……!
もう、遅すぎたってことなのか………。」
自分のしたことに後悔をし、項垂れる翔は
今さら自分の愚かさを呪っても遅いと
再認識をした。
智以外に、あれも、これもと望んでしまった
自分はすでにその段階で智の恋人で
あること自体失格だった。
いや、最初から資格なんかなかったのかも
しれない。
それでも……
それでも、智を諦めることなど考えられない。
そんな気なんか翔にはさらさらない。
どこにいるんだ……
どこに行ってしまったのだ………………。
俺の智は…………………………。
独りになってしまった智の逃げ込む先は、
和也のところか……
いや、それとも相葉の家なのか?
いつの間にか翔は走り出していた。
一刻も早く、智に逢いたい!!
逢って抱き締めたい……
そして、『ごめんなさい!!』と、
謝らなければならない。
決して、許してほしいからじゃない。
そうしなければ智の心が壊れてしまうかも
知れない……
それだけは絶対に避けなければならない。