第5章 窮鼠猫を嚙む
「言い返した?」
「うん。だって理不尽に責められる覚えは
ないからね。」
「いったいなんて言ったの?」
「…上辺だけは幼馴染みとか…
自分はマネージャーだからって
偉そうなこと言って、
心配しているフリをしてるけど、
ホントは俺を排除して後釜に座ろうとしている
卑怯者だって……そう言ってやったよ。
自覚のないホモほど
タチの悪いもんはないってね………」
「そんな言い方したわけ?」
「えっ?…もっと酷い言い方だったかも……」
「智は、教師だよね。」
「そうだよ…。
………………なんだよ!!
教師を生業にしている人間は、
自分の恋人を横取りしょうと
画策しているようなヤツを
目の前にして、泣き寝入りしろって?
子供を貶めるようなセリフを吐くなって!!
翔はそう言いたいわけ?」
「そうじゃなくて…
伊野尾は、そんなつもりじゃ
なかったと思うよ。
ただ、俺に憧れていただけ…。
恋愛とかそういうのとは全然違うと思うよ。
だからさー、智にホモだって罵られて
すっごくショックだったんじゃないの
かなぁ……。」
「だからって?発熱したって?
やっぱりウソ臭いなぁ~…。」
同情する様子を一切見せず、智は言い捨てる。
「あ~あ…そっかぁ…わかったぞ~!
熱中症だ!
身体の弱いお坊ちゃまだからー、
太陽の光がギラギラした中でウロウロと俺の後を
つけ回したりしてたからなー…。」
「智……!」
「とにかく病院に連れてくようにキャプテンに
言った方がいいって………
何度も言うけど、素人判断はダメだって……。」
「だから、そう言う問題じゃないんだって…
何でわかんないんだよ……!
もっと心理的な…精神的な病気なんだって…」
「はぁ~……」
智は、深い溜息をつくばかりで言葉を
返すのさえ、うんざりしてしまっていた。