第5章 窮鼠猫を嚙む
あの程度の言い合いで……
ショックで発熱?
信じられない。
どんだけメンタルが弱いんだよ……。
最近の学生はそんな奴ばかりなのか?
いや、そんなことはないだろう!!!
今の学生さんは、影に隠れてコソコソと
人の欠点を突いたりなんかしないだろう。
しっかりと自分の考えを持って、
困っている人の気持ちに寄り添える
人間ばっかりなんだ。
そんなヤツは、倒れたりはしない。
だって、ちゃんと傍に正しい答えを
導いてくれる人がいるはずだから……。
俺は、そう信じてる。
じゃあ伊野尾は?
やっぱりただの仮病じゃないか!!
おまけに、自分の家に帰りもせずに
わざわざキャプテンの家に転がり込むなんて、
あどさすぎるだろう……。
ただ、心配をしてもらいたいわけか?
冗談はやめてくれ…。
俺はそんなに暇じゃないんだよ。
身体が弱いヤツが40度もの熱を出していて、
病院に行きたくないと言い張っていること自体、
完全に不自然すぎる。
そこは疑ってもいいところだと思うぞ?
「はぁ~…だったら親を呼べは…」
「呼べるかよ。」
「何でだよ………。」
「だって、熱にうなされて、
妙なこと口走ってるんだって………」
「妙なこと……?」
「あの…その……つまり…………俺のこと……」
と、翔が、何やら言い淀む。
「へぇ~何て言ってるって?
幼馴染みを心配しているだけだって?
それとも……やっぱり自分も
ゲイなのかもしれないって?」
まぁ…そりゃあ親には聞かせられないよなぁ……
と、不謹慎にもクスッと笑ってしまった。
「何がおかしいんだよ!!!
あんた言ったんだろう。
伊野尾を追い詰めるようなことを………。」
「ああ、言ったよ。
こっちは罵られたんだ。
その分きっちりと言い返したたけだよ。」