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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第5章 窮鼠猫を嚙む



瞬間、智はギリッと武井の方を向く。

「お前も俺達の邪魔をするの?」

「え……?」

「俺を不安に陥れて、
別れさせようとしているだろ?

あいつとの未来は誰の指図も聞かない。
結末は自分の目でちゃんと見極めてから
けりをつける。」

「え………?それって……」

「武井先生…もしかして、別れさせて
隙を突こうなんて考えてないよなぁ~」

「………」
「だったらやめた方がいい。
そんなの逆効果だよ。
俺は、他人から説教をされるのが
一番嫌いなんだ。

そんなこと言われたら
逆らいたくなっちゃうかも……。

せっかく都合のいい同僚かと思ったのに………
もう、いいよ。
今日はありがとうございま……。」

智は、最後まで言いわずに、
フイっと視線を逸らし歩き始める。

「ま…待って下さい!!
俺……べつに…そんなつもりじゃ……。」

慌てて智の腕をつかんだ武井に
チラッと軽視し眼光鋭い視線を送ると

「放せ!!!!」
と一言、智は言い捨てる
それだけで十分だった。

武井はオズオズと手を放すと
不快な場所を後にする智の背中を
成す術もなく見送るしかなかった。

(もう、うんざりだ……!!)

と、智は心で呟いた。

どいつもこいつも、どうして邪魔ばかり
するんだろう。

攻撃してくる者には、仕返しをするだけだ。

これでもう伊野尾は、
俺に何もしてこないだろう。

自分のしたことが、
こんな形で翔に知られた以上、
もう黙るしかないはずだ。

と、自らの勝利を確信しながら悠々と歩く智は
これからおこるどんでん返しなど
想像もしていなかった。

『窮鼠猫を噛む』とはよく言ったもので
追い詰められ小者がしでかす思いもよらぬ
行動ほど、実はやっかいなものはないのだ。


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