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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第5章 窮鼠猫を嚙む



「あ…俺だけど。
翔今練習中だよね。」

わかっていて、わざわざ訊いてやる。

『他に何をしてると思うんだよ…。
何?急用?怪我でもしたの?』

「いいや違うよ。ちょっと話したい事があってね。」

『急ぎじゃないなら、後でもいい?
マズイんだよ。
練習中に私用の電話なんかしてると……』

「ふふ、もっとマズイことになってるんだよ。
今、翔のところのマネージャーさんが
目の前にいるんだー。」

『……え……?どういう事?』

「そうそう、この間、街で偶然にも出逢った彼、
伊野尾君だったよね。

その彼が、また偶然にも、
俺が同僚といっしょにいた時に
現れたって訳なんだけど……」

智の言葉に、伊野尾の顔がだんだんと
青ざめていく。

大勢の観衆が取り囲む中でも
ここまでやってのける智の怒りが
本物であることに気づき、姑息な攻撃など
通用しないと、ようやく解ったのだろう。

だが、少々遅すぎた、後の祭りであった。

「そいつが、まるで浮気現場でも
見つけたみたいに、俺を責めたててくるんだよ。
そのうえ、過去の恋人のことまで
持ち出してきて、不誠実だとか
言い出す始末なんだよ。

これっていったいどういう事だと思う?」

『伊野尾が?』

「街中で、他人同然のヤツに、
お前と別れろなんて言われて……
もし、それがサッカー部の意見で、
彼がわざわざ代表して代弁しに来たのであれば、
翔の口から直に聞きたかったよ。
まぁ、それが、大人としての筋だだと思うからね。」

『ちょっと待ってよ。
俺はそんなこと、一言だって言ってない!!』

「だったら、ちゃんとした答えを教えてよ。
いつもの駅で待ってるから……
今14時だから、17時に待ち合わせでいい?」

『ちょ…ちょっと待って…
ホントに伊野尾がそこにいるの?』

「いるよ!!目の前で震えてるけどね!!」

と、智はスマホをグイと伊野尾に突き出す。


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