第5章 窮鼠猫を嚙む
そして、興味本位で見ていた野次馬達は
いっせいに恥じ入って視線を逸らす。
「前も言ったはずだけど
翔が俺に飽きたのならともかく、
他からの干渉はいっさい受けつけない。
それも、俺を追い落として
後釜に収まろうとしている男の言い分なんて、
誰が聞くと思う?」
「お…俺は……。」
「まぁ…女に言われるなら、
ちょっとは考えるかも知れないけど……。
そりゃーやっぱり翔はノンケだからね。
誰の目から見ても
最高って女が現れたのなら
翔の幸せのために身を引いた方が
いいんじゃないかって…、
俺だって少しは考えるよ。
でもー明らかに翔狙いの男の忠告なんかに、
耳を貸すほどお人好しじゃないんだよ。
君が幼馴染みとして翔を干渉していること事態が
すでに、君の言うところの犯罪?妨げ?
十分スキャンダルレベルだと思うけど……。」
「----!」
伊野尾の顔に、ありありと浮かぶ動揺の色
少しは自覚しているらしい
自分のしていることが、
翔にずっと憧れていながらも、
選んでもらえなかった者のだだの嫉妬だと……。
「伊野尾君。
俺に説教する前に、己を振り返ってみなよ。
幼馴染みとかマネージャーとか、
あれこれ言い訳を用意して気持ちを
誤魔化してるような卑怯者は、
自分は真剣に翔のためを考えてると
思い込もうとしている分、
かえってタチが悪いんだよ。」
俺は、干渉なんてやっぱり許せないから
どんな妨害も恐れない。
だから、ごめんね。
攻撃してくる者には、それなりのお返しを
させてもらうよ。
さぁ、謝るなら今だよ…
まぁ…君みたいなお子様には無理だと思うけど……。