第13章 魔王の平生 ~中編~誕生記念 【織田信長】
「はぁ…全く。何を言い出すかと思えばこんな提案…
莉乃ってほんと、何を考えてるか分からない」
家康のつぶやきに光秀が答える。
「まぁ良いではないか。
信長様が町民に化けるなんぞ前代未聞だ。
俺は事の次第が楽しみだがな」
政宗も続く。
「信長様の町民姿なんて、この先一生見れないだろうしな。
しかし…
莉乃の町娘姿もなかなかそそるな、ありゃ信長様より目立つかもしれねぇぞ?
おい莉乃、信長様の次は俺と逢瀬だ」
上から下まで舐め回すように見る政宗の脇腹に、秀吉が軽く突きを喰らわれる。
「やーめーろ。
今日は信長様の誕生日なんだ。それに莉乃に不埒な考えを抱くな。」
「私も莉乃様と逢瀬に出かけたいです。莉乃様は何を着てもお似合いで。」
「三成、お前… 莉乃が来てから変わったな」
家康が真顔で言うが
「そうでしょうか?何も変わっていませんよ」
にこにこと答える三成にただため息をつく家康だった。
着替えを済ませた信長が戻ってきた。
「信長様、今夜の祝宴までには城にお戻りくださいね。
あと…今日はあくまで「町民」ですから、お忘れなきように。」
秀吉が信長へ進言する。
「分かった。」
「皆さん、ご協力ありがとうございました。
それでは行ってきますねっ!」
わくわくとした顔が隠しきれていない莉乃と、簡素な着物を着ても威厳が出過ぎの信長。
武将たちは町民に化けた二人の背中を温かい視線で見送った。