第13章 魔王の平生 ~中編~誕生記念 【織田信長】
いつになく真剣な表情の秀吉さんに、背筋が凍る思いがした。
「毒……」
私の怯えを感じ取ったのだろう…
「そのために、俺たちが信長様にお仕えしてお守りしてるんだろう?
心配するな。
信長様が天下統一を果たし平安な世を築くまで、俺たちも命懸けでお供するから。」
安心させるように頭をくしゃりとなでられた。
___この時代、生まれたその瞬間に…
家柄と性別だけで一生のルートが決められてしまう。
だから…
信長様には生まれもって『一般人』として生きられない運命が定められていた。
天下人と崇められる反面、いつも命の危険と隣り合わせの生活。
第六天魔王と恐れられ、戦をし、たくさんの命と引き換えに普通の感覚と日常を手放した。
それだけれど…
「ねぇ、秀吉さん…
信長様が『普通の人』として日常を送る事って無理なのかな?」
「ん?どういうことだ?」
「朝から晩まで公務。どこへ行くにもお付の人がいて…
食べる物にも飲み物にも気をつけて、いつも危険と隣り合わせで…
言動だって…律していなきゃいけなくて自由に立ち振る舞えないし…
それが信長様の宿命だって、分かってる。
でも、一日だけでいい、信長様が自由に過ごせる日…
作ってあげられないかな…?
秀吉さんは信長様の公務スケジュ、えっと、公務の日程を管理しているでしょう、
どうにかできない?」
期待と信頼を込めた目で訴える。
「そうは言ってもな…
この北の案件から帰ってきても、すでに多くのご予定が詰まってるんだ…
信長様の誕生日が近いから、お祝いの品を持った大名たちの謁見で日程が詰まって…
あっ!」
その後、秀吉さんから提案されたのは…
信長様にとって大きな思い出となりそうな誕生日プレゼントだった。
私もワクワクしながらその提案に意見を乗せる。
最高な一日にしてあげたい、そんな気持ちで針子部屋へと急ぐのだった。