第13章 魔王の平生 ~中編~誕生記念 【織田信長】
信長様と愛を交わしてから、もう1週間以上が経っていた。
あの日以来・・・またすれ違いの生活が続いている。
目が覚めて・・・
隣にあったはずの、ほんの少しのぬくもりですら感じられないほど、信長様がいるはずの場所は冷たくなっていた。
「またこの生活か…」
ため息をつきながらふと文机に目をやると、手紙らしきものが目に入る。
『莉乃
しばらく城を空けることになった。
これを貴様が読む時頃には、既に出発しているだろう。
帰りがいつになるかわからんが、帰還した暁にはまた布団になってやる。
その時は貴様も枕としての勤めを果たすように。』
「ご武運を…」
頂いた手紙をそっと抱きしめ、旅の無事を祈った。
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___安土城 廊下
「あれ!? なんで秀吉さんがここにいるの??」
思わず変な声が出てしまった。
「なんだよ、俺が城にいるのはそんなにおかしいか??」
『心外だ』という顔をする秀吉さんに慌てて謝る。
「ううん、ごめんなさい!
そんなつもりじゃないの。
今朝、信長様がお発ちになったと文が置いてあったから…
てっきり秀吉さんと一緒かと思って。」
「あぁ、そういうことか。実はな…」
そう言うと一歩私に近づき、声を潜めて話し始めた。
「先日、北に送った斥候から、不穏な動きをする大名がいるとの報告があってな。
政宗が治める領土の近くだ。
表向きは政宗の治める土地の視察、だが、本当の目的は違う…
今回は政宗と三成、家康を同伴させ、謀反の動きを事前に潰す。
俺と光秀は城での公務を代行ってわけだ。」
「む、謀反!? それって危険なんじゃないの??」
謀反、なんてセリフを聞いたのは元いた時代での『時代劇』くらいだった。
実際にあるというのが未だに信じられない…
「お前なぁ…
信長様が赴かれる先に「危険じゃない」所なんて無いんだ。
天下統一を阻止しようとする輩は次から次へ現れる。謀反も裏切りも、だ。
食事や酒、献上される品にまで毒が混ぜられ、暗殺を企てる者もいる。
乱世、だからな…」