第9章 紺青の享楽 ~前編~ 【伊達政宗】
___その晩
ポスポス、と障子を叩く音がした直後、
「莉乃 ちょっといいか?」
政宗の声がした。
「政宗!!」
すぐに障子を開け、招き入れる。
「どうしたの、こんな時間までお城で公務だった??」
政宗はいつもの様子と違っていて、何かに思案しているような雰囲気だった。
「…何かあった?」
そう問いかけると、黙って抱きしめられる。
「政宗??」
「___お前、今日…光秀と何か話したか??」
「えっっ!!?? なんでそれ知ってるの??」
「じゃぁ、話したんだな?」
「あ、うん。書庫で会ったから… た、たいした話はしてないよ。」
「ふうん。 書庫にいたのは光秀だけか?」
「家康も…いたかな。」
「そうか。 その他したことは?」
「他って…… ここで三成くんと秀吉さんと遊戯してた」
「そうか。 お前…
俺以外とは感情出して接するのな」
「ん?? どういう事??」
「分かんなきゃいい。」
そう言うと、抱いていた腕をパッと離し、部屋から出て行ってしまった。
その時の政宗は、感情のない冷たい目をしていた…
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それから…
政宗とは顔を合わせる機会がなく数日が経っていた。
仕事が手につかないくらいに気になってはいたものの…
こういう時に自分から御殿に押しかけて良いのか、相手を待つのが『奥ゆかしい』のか分からないまま時間だけが過ぎていった。
あぁ、こんな私じゃなかったのにな…
元いた時代では、悩みをいつまでも引きずるタイプではなかった。
会いたいな、政宗に… 涙が出そうになる。