第9章 紺青の享楽 ~前編~ 【伊達政宗】
…俺との付き合いに不満なのか??
あいつは500年後から来て、この世で男と深い仲になるのは俺が初めてなはずだ。
500年後の付き合いとは何か違うのだろうか…
考え事をしながら廊下を歩いていると、
「なんだ、お前も悩み事か」
光秀がそう声をかけてきた。
「悩んでねぇよ。しかもお前『も』って何だよ。
他に誰が悩んでるんだ?」
「お前、自分の女が悩みを抱えていることくらい、気付いてやれ」
「莉乃が??何を??」
「さぁな。」
「光秀お前な… あいつから何か聞いたのか?」
「聞いたとしてもお前に話す訳が無いだろう。
放っておくと、おれがもらうぞ」
そう言うと、ふっと笑って歩いて行ってしまった。
___なぜだか、不安になった。
光秀が気づくほど、あいつは何かに悩んでいるのか…
だから、ここのところ塞ぎ込むような…雰囲気が違ったのか。
何に悩んでるんだ??
今すぐ莉乃の所に行って、愛を伝えたくなった。
信長様との会談を終え、まっすぐ向かったのは莉乃の部屋。
部屋へと到着すると、そこには先客があったようだ。
中から楽しそうな声がこぼれてくる。
「秀吉さん、またそこ開ける?!
さっきもそこ開けて違ったじゃない」
そう言って大笑いする莉乃の声。
「では、次は私の番ですね。ここと、ここ、と。」
「三成くんは記憶力良いから神経衰弱強いね!」
「また三成にやられたか~」
秀吉の悔しそうな声の後に、三人の笑い声が響いていた。
「莉乃様の時代の『とらんぷ』とやらはとても楽しい遊戯ですね」
「説明しただけで作ってくれるなんて、秀吉さんは器用だよね~ありがとう!」
俺はその場をそっと後にした。
楽しげに声を上げて笑うあいつに、今は会いたくなかった。
他の男に嫉妬してる、かっこ悪い俺を見られたくなかったから。
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