第9章 紺青の享楽 ~前編~ 【伊達政宗】
(政宗Side)
500年後から来たという不思議な女は、あっという間に俺の心を掴んで離さなくなった。
この時代の女ではありえない所作の数々に、発言。
最初は物珍しく面白がって見ていたものの、次第にあいつの言動の一つ一つに目が離せなくなり…
信長様の持ち物だというのに俺の女にしたくなって押して、押して、押しまくった。
こんな事を言うと莉乃は「私は物じゃないから!」そう言ってあの勝気な目を尖らせるんだろうな。
信長様にだろうが俺にだろうが、臆することなく自分の意見を言う芯があるところ。
それなのに、誰かの痛みには人一倍敏感で、あったかくて、時にはおせっかいで。
莉乃には立場も身分も関係ない。人によって立ち振る舞いを変えるようなこともせず、誰にでも平等で優しい。
正直…おれはの莉乃そういう所に惚れまくっている。
器量の良さは全武将のお墨付きだが、中身も今まで見てきた女と全く違う
この俺が、一人の女にこんなに執着して頭から離れないなんて初めてだった。
今までは…
責任の生じる関係になるのが面倒で、軽く付き合える女か、一晩だけの関係…なんてのも当たり前だった。
あいつに惚れて、あいつを俺の女にしたくて。
ついてまわる責任も全部俺が背負いたくなった。
莉乃から恋仲になる同意をもらった後、一番にしたのは信長様や他の武将たちへの報告。
『俺が誰と付き合おうと関係ないだろ?』今まではそうだったのに、おかしなもんだ。
あいつを誰にも渡したくない、俺からの牽制の意味もあった。
……そんなあいつが、最近おかしい。
天真爛漫さが抜けて、しとやかになったというか…
一歩引くことを意識しているような、そんな雰囲気だった。
付き合う前は、楽しい時も悲しい時もそれを全身で表していた。
他の武将たちがそれをからかうほどに、あいつの表情はいつも豊かで、俺たちを和ませてくれていた。
俺の作った飯を目をキラキラさせて、顔をクシャりとさせて食べていたのに。
今はその感情も抑えているような…