第9章 紺青の享楽 ~前編~ 【伊達政宗】
意気揚々として書庫を出て行く莉乃の背中を見送る二人の武将。
「政宗との夜のことか」
そういってニヤリとする光秀。
「??莉乃はそんなの一言も言ってませんでしたけど。」
「・・・家康、お前あの小娘に惚れてるのか?」
「は? ま、全く惚れてません」
「ほう・・・?
『政宗さんもあんたを好きになったんだろうし。』
『も』と言うからてっきりお前『も』好きになったのかと思ったぞ」
「こ、言葉のあやです。な、なんで俺が…」
「俺はあの娘に首ったけだけどな」
「えっっ???」
「戯れだ」
そう言っていつもの笑顔を残して、光秀は書庫を出て行った。
「………恋ばなって何…」
光秀の真意も、莉乃の残した言葉も理解できないまま、家康は謎とともに残された。
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書庫から出て廊下を歩いていると、向こうから愛しい彼の姿が見えた。
遠くからでもシュっとしていてかっこいい!
「政宗~~!!」そういって小走りになる。
はたと気づき、歩みを遅めしなしなと彼のもとに向かった。
「おう、何やってんだこんな所で」
「書庫から戻るところだよ。政宗は?」
「俺はこれから信長様と奥州のことでちょっと話があってな。
行ってくる。」
そう言って腰のあたりを引き寄せ、頬にキスされた。
別れてから…
(私からもキスしたかったな、政宗に)
書庫で受けたアドバイスと、はしたない女だと思われたくない気持ちの天秤が揺れていた。
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