第7章 淡藤の深謀 ~前編~ 【石田三成】
___この日から、お互いの仕事の合間を縫って、この時代の情勢や地理、勢力関係などを教えてもらう『個人授業』が始まった。
三成くんは、それはそれは辛抱強く…
出来損ないの生徒に熱心に指導してくれた。
その日の授業は、とある新興勢力の家系についてだった。
「もーーーー!
なんでこの時代の人って途中で名前変えたり、何人も養子とったり、奥さん何人も持つのーーー…
もう、覚えきれない…」
思わず机に突っ伏して心の叫びを声に出してしまった。
きょとんとした顔の三成くんは
「・・・?
莉乃様の時代には違うのですか??」
「うん、全然違う…こんなに複雑じゃないよ」
私がそう言うと、
「興味深いです!ぜひもっと詳しく教えていただけませんか?」
とまるで菓子をねだる子供のように目をキラキラさせていた。
「あのね、私のいた時代はね…」
私はその日、日が暮れるまで後世の事を話した。
陽も傾き始め、三成くんに部屋まで送ってもらう。
久しぶりに懐かしい私の時代の話ができて満足だった反面、知らなくてもいい事まで話してしまったのではないかと少し心配もした。
「よし、今までの復習でもするか!」
メモを取った紙を見返しながら、三成くんのキラキラした目を思い出し、少し微笑んだ。
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(三成Side)
沢山の文献を読み、南蛮貿易の商人たちから世界の話を聞き。
織田軍の参謀として常に新しい情報や知識を入れるように心がけてきた。
今日莉乃様のお話を伺い、これから進んでいく年月…
しかも500年という長い月日の間に、この日ノ本は大きく変わることを知った。
莉乃様は具体的な史実などは教えてくださらないが、
人々の生活が平安で、戦のない世の中になること、そして…
男女や家族の関係、生活も大きく変わることを教えてくださった。