第6章 白銀の堕罪 【明智光秀】R18
「光秀さん…」
「なんだ?」
「馬は乗れるようになりました。
次に指南してほしいことがあります。」
「次は銃の扱いか?」
「いえ。
…光秀さんみたいに人の気持ちを読めるようになりたいです。
その方法を…教えてもらえませんか?」
いつも感情が出ない光秀さんの瞳に不思議な熱が宿った。
「何を言うかと思えば… お前は人の考えなど読めない方がいい…」
私から目をそらして光る湖面に移す。
「そうでしょうか?
私は……報われない気持ちを持て余す事に疲れてしまいました。
もし、言葉がなくても…気持ちが読めたなら、諦められます。」
「…もし気持ちが読めるようになったとして、何を知りたいんだ?」
「…本心です」
___お互い、何を指した話なのか分かっている。
私が『気持ちが読めたら諦められる』と言ったのは、光秀さんが情を返す気がないと踏んでの事だった。
かわされた私の気持ちの行方はずっと宙ぶらりんになっていた。
きちんと断ってくれればいい、そうしたら諦めて前に進めるのに。
光秀さんは、ずるい。____
「莉乃、お前が気持ちを読めたとして。
それが、お前の望む答えじゃなかった場合、どうするんだ?」
「それでも…向き合います。
私は、自分の気持ちからも、相手の気持ちからも逃げません。」
光秀さんをまっすぐに見つめた。覚悟を乗せて。
これは、答えをはぐらかし続けた光秀さんへの、最後通告のようなものだった。
人の考えを読むことに長けた光秀さんの事だ、私のこの決意も伝わったに違いない。
「…そうか、分かった。
…もう一度、考える時間をお前にやる。
本心に本気で向き合う気があるのならば、今夜、俺の部屋に来い。」
振られる…そう直感したけれど、自分で言った手前行くしかない。
「分かりました…」
城に帰る途中、ふたりには会話はなく、ただその間に風が吹いていた。