第38章 水色桔梗 ~2020誕生記念~ 【明智光秀】
___数日後
その晩、城の広間では光秀の誕生を祝う宴が行われていた。
今日という日は莉乃に辛いことを思い出させてしまうのではないかと武将たちは内心ハラハラしていたが、誰もがそこには触れぬように最新の注意を払っていた。
この宴の主役である当人以外は。
光秀 「そういえば、今日は莉乃の「もとかれ」とやらも誕生日だな」
莉乃以外の全員がぎょっとした顔をして光秀の方を一斉に見る。
信長 「莉乃、こちらへ来て酌をしろ」
「はい」
信長が気を回して莉乃を呼び寄せると、その間に武将たちが一斉に光秀に抗議する。
秀吉 「バカかお前は!!
三成、これは悪い見本だからな、覚えておけ。」
三成 「はい、参考にさせていただきます。」
家康 「こういう大人にはなりたくないですね」
政宗 「だから光秀はいつまでたっても恋仲が出来ないんだな。」
光秀 「お前たち・・・
誕生日の主役に向かってなんだ。少しは慎め」
秀吉 「むしろお前が慎めってんだよ!」
しばらく言い合いが続く中、ふと武将たちが信長たちの方を見ると、すでに顔を赤くした莉乃がふにゃふにゃと笑っていた。
「酔ってしまいました、顔を冷やしてきますね」
そう言うと莉乃は広間から出て行ってしまう。
秀吉 「信長様? 莉乃は一体・・・?」
信長 「あぁ、莉乃と飲み比べをしておった。
あやつは女子ながらよく飲むゆえ、鍛え甲斐がある。
酔っても秀吉のように小言を垂れぬしな。」
にやりと笑う信長の笑顔を見て、秀吉は大きく息を吐いた。
信長が光秀に向かって静かに声をかける。
信長 「光秀、行け。」
光秀 「はい?」
信長 「城内とはいえ、一人にはしておけぬ」