第38章 水色桔梗 ~2020誕生記念~ 【明智光秀】
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「んっ?何だろう・・・」
自室の文机の上に、笹で包まれた何かが置いてある。
手に取るとそれは私の好物の団子だった。
団子の下には、それを作った政宗からの手紙が折りたたまれ置いてある。
「政宗は相変わらず達筆だなぁ・・・
達筆すぎて、よ、読めない・・・」
とりあえず団子をかじりながら手紙とにらめっこをしていると、障子の向こうから呼びかける声がした。
三成 「莉乃様、いらっしゃいますか?」
「ちょうどいいところに三成君!」
すぐに部屋へ招き入れると、三成君の手には茶葉の入った筒が握られていた。
三成 「体調はいかがですか?
昨晩、沢山お酒を飲まれていましたから、ご気分がすぐれないのではないかと思いまして。
茶葉をお持ちしました。
私が煎れますから、どうぞ座って待っていて下さいね」
「わぁ、ありがとう!お団子もあるし、一緒に飲もう。
でもお茶は私が煎れるから、三成君が座っていて。
その間にお願いしたいことがあるの。
この手紙に何て書いてあるか読んでくれる?
政宗からなんだけど、達筆すぎて読めなくて・・・」
三成 「お安いご用です」
お茶を煎れながら視線を向けると、三成君は目を細めて手紙を黙読している。
何か嫌な事でも書いてあるのだろうか・・・?
さっきまであった天使のスマイルが顔から消えていた。
「三成君?」
政宗が作ってくれた団子に、煎れたお茶を添えて出す。
正面に座ると、その紫の瞳がいつもより深く色付いていた。
三成 「政宗様のお手紙には莉乃様の体調への気遣いと、団子を作ったので食べて元気を出すように、との旨が書かれています。
あと・・・」
「あと?」
三成 「・・・そのままお読みしますね。
『先の世の事を思い出して寂しくなったら、いつでも俺の所に来い。
全て忘れさせてやる。お前は俺の隣で笑ってろ。
追伸 光秀はやめておけ。』」
「ぷっ、政宗らしいね!それに、三成君の口から政宗の口調が出ると、変な感じ」
表情を変えず淡々と読み上げる三成君とは逆に、私は政宗の冗談めかしたエールに笑顔がこぼれていた。