第38章 水色桔梗 ~2020誕生記念~ 【明智光秀】
莉乃が酷い頭痛と共に家康の御殿の門を出ようとした時、その門扉に寄りかかるようにして秀吉が立っているのが見えた。
こちらを見て心配しているその表情に、莉乃は思わず駆け寄って声をかける。
「秀吉さん、どうしたの!?何かあった??」
秀吉 「あー、走るな、走るな!何かあったのはお前の方だろ。
家康の所に行ったと城の者から聞いたから、体調を崩したんじゃないかと思ってな。
大丈夫か?」
「二日酔いみたい。昨日、飲み過ぎちゃった。
大丈夫だよ、心配かけてごめんなさい。」
頭を下げると、安堵した秀吉の眉も下がる。
秀吉「それならいいんだ。部屋まで送ってくから、今日はゆっくり休め。
針子の仕事も今日は休めるように、伝えてあるからな。」
「仕事はちゃんと行くよ。
二日酔いで仕事できないなんて、社会人失格だもん」
秀吉 「しゃかい・・・じん?
あのなぁ・・・お前は『姫』なんだぞ?それに休むのは信長様のご命令だ。
だから安心して休め、な。」
そう言って頭をくしゃりと撫でる。
(そうだった、この時代では社会のルールよりも信長様の一声の方が大きいんだ・・・)
未だに馴染めない戦国スタイルに、莉乃はふぅとため息をつく。
「信長様の?・・・それならお言葉に甘えて、今日はお休みさせていただくね。」
信長様からの「休め」という一声に反して針子部屋に出勤しても、返って針子のみんなに迷惑をかけてしまう。
命令に反した、というのはこの時代では命取りなのだから。
城へ向かって歩きはじめる。
秀吉 「なぁ、莉乃・・・」
「なあに?」