第38章 水色桔梗 ~2020誕生記念~ 【明智光秀】
世も更けて、ほろ酔いを通り越した莉乃。
見た目から分かるその酔った姿に、見かねた秀吉が声をかける。
秀吉 「莉乃、そろそろやめような。
部屋まで送っていくから、もう休め」
酒のせいで目は潤み、赤くなっている莉乃の頬。
唇は熱を持ち、ほんの少し開いていた。
男なら誰もが放っておけないだろうその緩んだ姿に、秀吉は心配と、そしてじわりと胸を灼く不思議な感情に揺れている。
「ぜんぜん、まだ、平~気!まったく酔ってないよ」
家康 「『まだ酔ってない』は酔っ払いの常套句だから」
政宗 「今夜のお前、いつもと違うぞ?
光秀の誕生日を聞いた後からおかしくなったが、誕生日になんかあんのか?」
素面の政宗が尋ねる。
なかなか口を開かない莉乃の様子がいつもと違うのは、その場の全員が感じていた。
莉乃は一度空に浮かぶ月に視線を移すと
「私の生まれ育った時代と、おんなじ。」
そう言ってから、ぽつりぽつりと話し出した。
「・・・10月4日なの。
「彼」の、正確には「彼」って言っていいか分からないけど・・・
誕生日がね。」
一瞬で静まりかえる広間・・・
家康 「は?」
秀吉 「!!??『彼』って恋仲のことだよな?
莉乃お前、相手がいたのか!?」
突然莉乃から出た恋仲の話題に、信長を始め武将たちは驚いた様子で続きが話されるのを待つ。
ずっと心にしまっていた想い。
それがお酒の魔力で封印を解かれたように、莉乃の口から滑り出てきてしまった。