第38章 水色桔梗 ~2020誕生記念~ 【明智光秀】
光秀 「己の生まれた日など、さほど気に留めたことなどないがな。」
政宗 「どうした莉乃、急にうろたえて。
酔ったなら部屋に送ってくぞ?」
「あ、ううん、なんでもないよ!さ、飲もう飲もう~!」
開け放たれた障子の向こうに見える月を見ながら、莉乃はまた盃を取り飲み進めていく。
その様子はまるで、早く酔って何かを忘れたいと思わせるような・・・
そんな飲み方だった。
信長 「莉乃貴様、城中の酒樽を空にする気か」
一見辛辣そうに聞こえるが、それが心配を含んだ言葉だというのは全員が分かっている。
そんな信長に向かって、柔らかく微笑む莉乃。
いつもなら何かしらの返しをしてくるはずのその活発な唇は、ただ笑みを浮かべるだけだった。
その憂いを帯びた表情に、信長はそれ以上何も言えない。
莉乃のいつもの飲み方と違う、そう気付いたのは上座から見ている信長だけではなかった。
三成 「莉乃様、お水をお持ちしましょうか?」
「ううん、大丈夫だよ」
三成が提案するも、首を横に振る莉乃。
いつもの笑顔だけれど心ここにあらずといった風で、危なげな早さで飲み進めていく。
政宗と秀吉はお互いを見合い、信長は片眉を少し上げ。
光秀は平常時と変わらず、考えが読めない表情をしている。
家康は眉間にしわを寄せ・・・
頭の中で翌日莉乃に渡す薬の準備をしたのだった。