第36章 純白の羨望 【伊達政宗】R18
「政宗っっ!迎えに来てくれたのかい?」
しなを作って政宗に近づいていく女。
政宗 「お前が・・・やったのか?」
「あの薬はねぇ、ほんとはあたしとあんたでいただこうと思ってたのさ。
この世じゃ一緒になれないだろ? あの世なら、ってね。
それなのに、政宗ってば変な女に騙されて。
どうせ姫さまなんて褥じゃつまんないだろ、品良くってさ。
こんな跡も付けらんないだろうしね。」
そう言うと首を傾け、首筋に残る赤い跡をわざと見えるようにした。
光秀がじろりと政宗を見る。
「あの姫さんはね、もうじき死ぬよ。
だから安心して、あたしんとこに戻っておいで」
まるで母親が子供を抱き留めるかのように、両手を広げて受け入れようとする女。
政宗 「何、言ってんだお前・・・」
一時とは言え、自分が寝た女が莉乃に毒を盛るなど・・・
それが先ほどの長屋での一件が端を発したと分かり、政宗は自分のしてしまった事の大きさと、目の前で笑顔を見せている女に、えもいわれぬ恐怖を感じていた。
光秀 「政宗・・・お前がどこの女を抱こうが構わないがな・・・
自分が手を付けた女の始末ぐらい自分でしろっっ!!
莉乃を巻き込むな!!」
今まで感情的に声を荒げることなどほとんどない光秀が、鋭い声で政宗を一喝する。
その発する怒りの恐ろしさに、調理場の端で事の成り行きを見ていた店員、店主は縮み上がっていた。
政宗 「あぁ。
・・・こうなったのは元はと言えば俺が原因だ。
俺がこいつを城まで連れて行く」
光秀は女の腕手を縛るための縄を店主よりもらい受ける。
その縄を政宗に手渡した。
光秀 「逃がすなよ」
政宗 「んなことしねぇよ。」
光秀 「女。念のために聞くが、解毒剤は?」
「ふんっ、野暮な男だよ。
そんなんでよく武将が務まるもんだ。
死ぬ気で使うのに必要無いだろ、そんなもん。」
光秀 「城で待つ。」
女の悪態には一瞥もくれずに政宗に一言告げると、光秀は莉乃の元へと急いだ。