第36章 純白の羨望 【伊達政宗】R18
政宗 「莉乃、甘味は俺が作ってやる。
団子でもぜんざいでもお前の好きなもん、なんでもだ。
だが、城で食おう。な?」
秀吉 「そうだな。
それにそろそろ城に戻る時間だ。信長様も心配される。
甘味は政宗に作ってもらえ」
有無を言わさぬその口ぶりに、莉乃は従うしかなかった。
「そんなぁ・・・わかりました・・・
その前に、お茶を飲ませて下さい。口の中が甘々で」
光秀 「待て!」
莉乃が茶を含んだのは、あまり聞くことのない光秀の焦った声と同時だった。
「??」
___莉乃が覚えているのは、ここまで。
最後に見えたのは・・・
手から転がり落ちた湯のみと、
今までに見たことのない、武将たちの悲痛な表情だった。
莉乃が注文した白玉ぜんざいに一瞬キラリと光る物が見えた家康は、即座に自分の元へそれを寄せた。
白玉をつつくふりをして探る。
・・・くそっ、ガラス片か。
知らずに莉乃が口にしていたら・・・
身震いがする。
「店内にいる」
家康はそう目で武将たちに合図を送る。
家康が食べるはずも無いのに引き寄せたことで、ぜんざいによからぬ物が仕込まれていたのは、武将たちにも即座に伝わっていた。
これ以上、店の物を食わせられない。
そう思った瞬間だった、光秀の制止と同時に莉乃が茶に口を付けたのは。
莉乃の手から湯飲みがころりと滑り落ち、卓上に茶が広がっていく。
「あ・・・れ・・・・・・?」
身体が左右に揺れ始め、目は焦点が合わなくなり、呼吸が激しく乱れていた。
「はっ、、はっ・・・な・・・に・・・・・・くる、し・・・・・・」
秀吉「莉乃っっ!しっかりしろ!! 家康ーっ!」
ぐらりと傾いた身体を、隣にいた秀吉が咄嗟に抱きかかえる。
家康 「分かってます、すぐに城へ。三成!」
三成 「籠を呼びました、城まで私が先導します」
政宗 「ここにいる全員ー!一歩たりとも動くな!!動いた奴は斬る!!」
政宗の発した鋭い声が店内に響き渡る中、光秀は既に店の奥へと消えていた。