第36章 純白の羨望 【伊達政宗】R18
光秀が視線を送ると、秀吉もその視線をすぐに投げ返す。
二人は莉乃を挟むように、すっと立ち位置を変えた。
政宗 「莉乃、こっち来い」
三成 「莉乃様、お隣へ。」
家康は腰に携えた刀の柄に手を添える。
___全てが同時に起きた。
それは瞬きする位の一瞬のことだった。
先ほどまでの穏やかな雰囲気が一変する。
「えっ、急に、ど、どうしたの?みなさん・・・?
目が・・・こわい・・・よ?」
邪(よこしま)な気を感じた武将たちは、一瞬で戦闘態勢に入ったのだ。
それが莉乃に向いていると感じたのだから尚更。
戦場ではお互いの背中を守り合い、命を預け、何度も死線をくぐり抜けてきた。
普段は穏やかな武将たちとはいえ、戦場では命がけで戦う猛者たち。
敵からの命を狙う「気」には得に敏感だった。
誰も、何も発せずとも、視線のやりとりだけで会話が成立する。
甘味を楽しみにしていた莉乃は両手をぎゅっと握り、心配と不安が混じった顔で立ちすくんでいる。
店内に残っていた客も武将が発するただならぬ雰囲気に、「何事か」と目を丸くさせていた。
秀吉は瞬時に判断する。
(ここは一般客がいる茶屋、しかも客も多い。
今ここで乱戦になるのはまずい。
「気」を感じたものの、それがどこから発せられたものか分からない。
おそらく、店の外からだろう。
信長様の刺客が莉乃にも放たれたか?
店外から仕掛けてくるとすれば矢か、銃だろう。
無闇に騒ぎ立て、この気を消してしまうのは得策じゃない。
ここは・・・一旦泳がすか。
俺たちがいるんだ、店内で莉乃に危険が及ぶことはないだろう。
それに・・・莉乃にこんな顔をさせておけない。)
秀吉 「なーんでもない!
さ、やっとお待ちかねの甘味だぞ~」
この一言で、他の武将は秀吉の考えを察した。
秀吉がいつもの笑顔で莉乃の頭をくしゃりと撫でる。
この数秒の出来事が何もなかったかのように、他の武将たちも元の表情に戻っていた。
それが、秀吉の策に同意した合図だった。