第36章 純白の羨望 【伊達政宗】R18
その頃店内では、客たちが武将と姫のために席を空けて差し上げようと、かき込むようにして甘味を食べていた。
客1「いやー、びっくりしたな!
急にあれだけの武将様がいらっしゃるとは。」
客2「今日は幸先がいいや、
あんなべっぴんさんを見たのも話しかけられたのも、生まれて初めてだ!」
客3「おめぇに話かけたんじゃねーよ!
姫様は店にいた皆に声をかけて下さったんだ、
勘違いすんなバカタレが!」
チラチラと店の外に目をやりながら、話す客たち。
まるで有名人を見たかのように興奮し、あちこちの席で武将と姫がいることに話の花が咲いている。
店主 「お客さんたち、悪いね。食べたら席を空けておくれ」
申し訳なさそうに客に告げる店主は、その声とは裏腹に、嬉しさと感動で目が若干潤み輝いていた。
そしてしばらくの後。
席が用意できたことを知らせる店主に案内され、ようやく店内へと足を踏み入れた莉乃一行。
「家康、やっとだね!」
勝手に仲間扱いされた家康は誤解を解けぬまま、
目をキラキラとさせている莉乃に
「あ、う、うん・・・」
と答えるしかなかった。
店内へとウキウキとした足取りで案内されている莉乃の後ろでは・・・
(秀吉 「家康、偉いぞ。水を差さなかったな」)
(家康 「はぁ・・・
あんな顔されたんじゃ、さすがに言い返せませんよ。」)
(三成 「家康様はお優しい方ですから」)
(家康 「お前以外にはな」)
(光秀 「先に言っておくが、俺は甘味の味は分からん」)
(政宗 「今更かよ。」)
「皆さん、何をぶつぶつ話してるの?」
振り返った莉乃が武将たちを見た、その瞬間だった。