第36章 純白の羨望 【伊達政宗】R18
秀吉 「そりゃそうだろう!
姫が一人で城下をうろつくなんて、誘拐でもされたらどうする!
変な虫が付くのも心配だしな・・・
___莉乃その顔やめなさい。口を尖らすな。
城で諭していたら光秀が通りかかってな。
『城下の視察も立派な治安維持の仕事だ。
それに莉乃がここでの生活に早く馴染むように
城下や人々の暮らしを知るのも、織田家ゆかりの姫として必要だろう』なんて言いやがって。」
正論で負けた悔し顔をする秀吉に、涼しい顔で笑っている光秀。
「光秀さんの説得のおかげでこうして食べに来れた、
って訳なの。
光秀さん、ありがとうございます!」
所々に意味の分からない言葉があったが、満足げに微笑む莉乃の愛らしさに頬が緩む。
甘味一つのことでこんなに表情をコロコロと変えて、目もキラキラさせやがって。
本来なら、こんなに表現豊かにしたり、口を開け声を上げて笑うなど、姫とは思えない所作だ。
莉乃曰く、500年後ではそれが普通らしい。
あいつがここに来てからもう三月(みつき)か。
俺たちは最初でこそ疑いの目で接していたが、今では
莉乃の言うことを信じ、先の世の事を興味深く聞けるようにまでなっていた。
最初は「姫がはしたない」と秀吉が注意した事もあったが、
今では莉乃のその天真爛漫な振る舞いが俺たちを和ませている。
あの信長様ですら、
「良い、莉乃の思うように振る舞わせろ。」
と許可を出したほどだ。
だが今は乱世。
姫が護衛を付けずに城下に、しかも甘味を食べに行くなど・・・確かに聞いたことがない。
しかも、莉乃のこの見た目と人当たりの良さだ。
秀吉が心配するのも分かる気がする。
にこにこと礼を言う莉乃へ、光秀がさも当たり前のように頭を撫でる。
チッ、光秀の奴。気に入らねぇな。