第35章 千歳の誓約 前編 【織田信長】R18
出て行った先を見つめる武将たち。
秀吉 「・・・今、『かれし』って仰ってたか?」
光秀 「先ほども『俺の女』と仰っていたではないか。
宴の間の信長様を見てなかったのか?
それに昨日今日の話ではないぞ。
お前・・・右腕のくせに気がつかないとは・・・」
三成 「莉乃様を見る信長様のお顔、それはお優しくなられて」
政宗 「莉乃が子供がどうのって話してる時の信長様の顔見たか!?
あれは見物だったな。あんな顔されるのか、信長様も。」
光秀 「家康が莉乃の髪を直してやった時。
抜刀されるかと思ったぞ。」
家康 「流石に信長様もそこまで・・・
するかも、あの様子じゃ。」
秀吉 「気付いていなかったの・・・俺だけか・・・
信長様を一番に・・・くっっ・・・」
がっくりと肩を落とす秀吉。
光秀 「まぁそう気を落とすな。
お前の信長様に対する忠義がその程度だった、と言うだけのことだ」
秀吉 「お、お前な!!!」
実のところ・・・
秀吉以外の武将たちは、少し前から信長と莉乃の関係が変わったことに気がついていた。
三成ですら気付くほどの、信長の莉乃に対する柔らかな眼差し。
武将の誰かが莉乃をからかえばすぐにそちらを気にする様子や、莉乃を目で追い気遣う様子。
信長が莉乃に特別な想いを抱いていることは、丸わかりだった。
だが、本人たちからそれが出ない限り、主の恋路に口を出すことなどできるはずもない。
それに、信長様の性格を知っていた武将たちは、分かりやすく『俺の女』と呼び、また広間から抱きかかえて出て行ったことに逆に驚いたほどだった。