第35章 千歳の誓約 前編 【織田信長】R18
莉乃の爆弾発言から数刻が過ぎ、深夜に迫る頃・・・
莉乃の手に持った大福が揺れ始める。
光秀はその様子をしばらく前から見ていた。
少しだけ、口角を上げて。
その目は愛おしい者を見るような、いつもとは違う優しい目つきだった。
光秀 「ふっ、無防備だな」
光秀の視線の先に目をやる政宗。
政宗 「ん? おっ、莉乃寝ちまったのか!?」
そして前後にも傾き始める莉乃の身体。
うつらうつらとし始めてしまった手から光秀はそっと大福を取り上げると、身体を支え座布団の上に横たわらせた。
他の武将たちも莉乃の様子に気づくと、皆一様に莉乃の寝顔を見て頬が緩む。
家康 「のんきな顔」
言い方は辛辣ながらも、ばさりと頬にかかる髪を耳の方へと流してあげる家康。
三成 「莉乃様は寝顔も可愛らしいですね」
三成もまた、優しい視線で莉乃を見て微笑んでいる。
光秀 「これだけの武将の前で眠りこけるとは・・・
大した娘だ」
政宗 「ったく、しょーがねーな。部屋まで運んでやるか」
秀吉 「待て。お前が行くのは駄目だ。
俺が行く。」
政宗 「なんでだよ」
秀吉 「お前は莉乃の安眠を脅かすからだ」
政宗 「寝てる女に手ぇ出す趣味はねーよ」
家康 「信用できませんね。
行くなら一筆書いていって下さい」
政宗 「は?『莉乃に手出ししません』ってか?」
家康 「はい。」
光秀 「血判付きでな」
三成 「それならば安心ですね」
政宗 「お前らなぁ・・・」
信長 「よい、俺が連れて行く」
そう言うと上座から様子を見ていた信長が莉乃の元へやってきた。
秀吉 「えっ、信長様の手を煩わせるのは・・・」
信長 「『かのじょ』が酔って寝ておるのだ。
むさ苦しい男どもの中で。
部屋まで届けてやるのが『かれし」』の役目であろう」
そう言うと軽々抱き上げ、広間から出ていった。