第34章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】石田三成編
(莉乃Side)
信長様が突然言い始めた縁談話。
しかも武将の中から夫を取るなど・・・
それでも私は聞かれたまま、想っている彼の名前を告げた。
信長様の前で、嘘や言い逃れが効かないことはこの5年でよく分かっていたから。
いつも何が起きても冷静な信長様の動きが一瞬止まり、
「・・・三成? 石田の三成か?」
と言ったときには思わず吹いてしまいそうになったけれど。
先日の光秀さんもそうだった。
なぜ三成君というと驚くのだろう・・・
「ほう、三成か。奴はまだ若いが・・・
そうか・・・主である秀吉にも通さねばならんな・・・」
動揺する話の内容だったせいか・・・
あっけなく勝負が付いた囲碁を終えた私は、下がって良いと言われ天主を後にした。
・・・ドキドキする。
叱られない程度の早歩きで廊下を抜け、小走りで自室に戻った。
その間、頭の中を
『縁談 夫 縁談 夫 』
その二つが駆け巡っていた。
私だっていつかはと思っていたけれど、この時代のしきたりやら今の状況やら・・・
現代にいた頃と違いすぎる環境に、結婚なんて見えなくなっていた。
そもそも、好きな人ができたのだってとても久しぶりだし・・・
でもそうだよね、ここに来て5年。
確実に年を重ねていて、この時代では子供が2~3人いてもおかしくはない年齢にさしかかっていた。
三成君のことは好きだけれど、信長様の命で進展するとは思ってもみなかった。
進展・・・どころの騒ぎではない。
気持ちを伝えてもいないのに、しかも、三成君の気持ちだってあるのに・・・
この時代で生きて行くと決めたものの、こういう形で人生設計が成されていくことに不安もあった。
「こうでもしなきゃ、姫は結婚できないんだよね・・・」
自由恋愛で結婚する時代が来るなんて、あと数百年も先なのだから。
自分を納得させるようにつぶやくと、自分が姫だという未だに慣れない立場に、少しため息をついた。