第33章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】徳川家康編
(家康Side)
頭一つぶん小さい莉乃の身体を腕に閉じ込めて、ほんのり色づいた頬を上から見つめる。
今まで何度も見たことがあるその色は、正面から、横からだけだった。
こうして間近で見てみたかった。
色づく原因は俺、にして欲しかった。
家康 「もう逃がしてあげないから、覚悟して。」
そう言うと莉乃は益々頬を赤く染め、それなのに勝気な目をして。
「それはこっちの台詞」
と可愛く口を尖らせた。
家康 「生意気」
腰をかがめ、その口先に初めて自分の唇を重ねる。
ほんの一瞬触れ合うだけの軽い重なりなのに、莉乃はハッと息を飲み、大きな瞳をパチパチさせたかと思うと艶々と潤み出した。
へぇ、こういう反応するんだ。
まずい・・・可愛すぎる。
家康 「さっきまでの勝気な目はどこにいったの?」
可愛すぎてつい意地悪いことを言ってしまった。
「しっ、知らないよ」
照れて湯上がりのように蒸気した莉乃。
こんな表情、俺以外の誰にも見せられない。
想像していたよりもずっとずっと柔らかく暖かい唇も絶対、誰にも渡せない。
唇だけじゃない、莉乃の全部。
家康 「もう、戯れで口付けなんて・・・
されないでよね。
あんた、隙だらけなんだから」
そう言って指先で莉乃の唇をふにっと押した。
天邪鬼な俺がこうして本音を晒せたきっかけはあの疑わしい催眠術だったけれど、今からは本音も衝動も抑えなくていいという、明らかな現実に胸が沸き立つ。