第33章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】徳川家康編
照れているのか、眉間にしわを寄せて困った顔をする莉乃を見て、ふとした疑問が生まれた。
莉乃が俺たちのいるこの時代に飛ばされてきて5年。
ここでの慣れない生活や作法に順応していく莉乃を見てきたけど、恋仲の相手とはどうなんだろう。
家康 「莉乃のいた時代って。
想いを伝え合った後はどうするの?」
「へっ!?」
莉乃から出た素っ頓狂な声に笑ってしまう。
「普通だよ、『デート』って呼ばれる逢瀬をしたり、休みの日はお互いの部屋で過ごしたり・・・
カフェ、じゃなかった茶屋で甘味食べたり、うーんと、今で言う『遠乗り』したり・・・お、お泊まりしたり・・・」
最後に照れながら言った部分は後でよく聞いてみるとして・・・
家康 「ふうん、500年後も今と変わらないってこと?」
「うん」
それならば。
腕の中にいる莉乃の背中をゆっくりと撫でる。
着物の上からでも分かるその暖かさを、俺からも発する熱を、お互いに与え合いながら。
家康「分かった。『でえと』いつにする?」
「ふふっ、家康って案外せっかちなんだね。
じゃぁ、明日!」
家康 「却下。今からね。」
そして今度はゆっくり口づけた。
俺たちの初めての「でえと」の始まりの合図として。
いつから莉乃を好きになったかなんて分からないほど、気がついたら莉乃を目で追ってた。
500年先から飛ばされてきたなんて、今更どうでもいい。
今、目の前にいて。いや、腕の中にいて。
俺のこれからを一緒に歩んでくれたら、時を超えたことを後悔しない位、あんたのこと幸せにしてみせるから。
家康 「城下の茶屋に行ってから、遠乗りして湖に行こうか。
その後は・・・」
「ちょ、ちょっと待って、詰め込みす__」
抗議の声を、再び口づけで遮る。
俺たちの初めての喧嘩が始まりそうな気配ですら、愛おしい。
「もう、観念して。めいっぱい可愛がるんから」
やれやれ、という顔をして見せる。
反対に、目をキラキラさせてこちらを見返す莉乃。
500年を超えて二人で紡ぐ物語が今、始まった。
情愛の行方 徳川家康編 _完_