第33章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】徳川家康編
「・・・え?」
家康 「・・・全部聞こえてたんでしょ。
で、あんたの気持ちはどうなの」
私をじっと見下ろす目は、感情を抑えているように見える。
でもそれは完全には隠れきれてはいなくて・・・
家康の気持ちが垣間見えたその瞳は、熱っぽく煌めいていた。
自分の鼓動が騒がしい。
「私も・・・・・・好き」
ずっと、ずっと前から言いたかったのに。
いざ言おうとするとささやきのような、ほんの小さな言葉にしかならない。
家康 「もう一回」
「・・・・・・好き」
さっきよりは大きめの声で言えた。
でも家康を正面に見ることは出来ず、うつむいて畳の縁を見ながらだったけれど。
その視界の中に、家康の着物の裾が入ってきたと思った瞬間。
身体が暖かさと家康の香りに包まれた。
見上げると熱い視線がこちらに向けられていて、その真剣な目に射貫かれる。
二人の視線が交差したのも束の間、頭ごとぎゅっと抱きしめられ頬が家康の胸に押しつけられた。
家康 「やっと・・・ つかまえた」
家康らしくない、むき出しの本音が上から聞こる。
その冷静な表情とは裏腹に、早鐘のように打つ心臓の音を聞きながら・・・
家康の背中に腕を回し、気持ちを込めて抱きしめ返した。
そう思ってるのは私の方だよ、と伝わるように。