第33章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】徳川家康編
それから数日は家康とも光秀さんとも顔を合わせない日々が続いた。
二人とも公務で城を留守にしているらしい。
どんな顔をしていいか分からなかったから・・・
会えないのがかえって良かったかもしれない。
あの日見たショックな光景も、見られた衝撃的な行動も、もう忘れたかった。
しかし、それがいつまでも続くわけがなく・・・
今夜行われる信長様への謁見の席に、武将全員と私が同席することになっていた。
今、巷(ちまた)で流行の『ある方』との謁見の場らしい。
普段、謁見に同席すると言えば秀吉さんと光秀さんくらいなのに、と不思議に思っていたけれど、その『ある方』の詳細は教えてもらえなかった。
秀吉さん曰く「楽しみにしとけ」とのこと。
一体どんな方なんだろう、そう思いながら時間は過ぎ、いよいよ謁見の時間となった。
いつものように、武将たちの下座に座る。
なるべく、家康の方を見ないようにして・・・
心なしか家康からも距離を感じて、忘れようとしている切なさがぶり返しそうになる。
一段高くなった上座には信長様が、その下段正面には、西洋の服を着た男性が座っていた。
男性 「本日はお時間をいただきありがとうございます。
信長様に実際に私の術を見ていただけるとは、大変光栄にございます。」
信長 「貴様が『催眠術』を操るという者か。
早速やってみせよ」
三成 「信長様?『催眠術』とは何でしょうか?」
男性 「催眠術とは、簡単に言えば『暗示』をかけることです。
暗示の内容によって、眠くなるような感覚をもたらしたり、いつもより力を出したり、自分とは違う他人や動物になったり・・・
隠れた本音を暴いたりすることもできますよ。」
男性はニコニコとしながら説明をする。
それを聞いた武将たちは驚きを隠せない様子だった。