第33章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】徳川家康編
(光秀Side)城下 茶屋
光秀「お前もいい年頃だ。慕う男がいてもおかしくない。
相手によっては、俺が協力してやれないこともないぞ?
家康を追ったこと、黙ってやるついでだ。
誰に惚れてるのかも言ってみろ。」
机に両肘を付き、顎を手のひらで支える。
莉乃が答えたのは・・・
「い、いません!!」
顔を赤くし、先ほどふざけて口付けたせいか目が潤んでいる。
その瞳に宿るのは、恥ずかしさと
おや、怒りもか。
そうか、奴に見られたくなかったのだな。
なるほど。
先ほど指摘したのは図星だったと言うことか。
顔に書いてあるのは紛れもない本心だが、俺を前にしてもその心を隠し通そうとしている理由を知りたくなる。
しかし、こんなに分かりやすく顔に出るのも目に毒だな。
お前が誰を好いているか、どんなに嘘をつこうとしてもお見通しだ。
お前と俺では嘘をついてきた場数が違う。
___莉乃胸の内を知って、若干、心の片隅がチクリと痛んだ。
あの柔らかい唇も、ほんの少し漏れてしまった声も・・・
俺が手にする事はないのだから。
だが、手に余る感情に蓋をするのは得意だ。
今までもずっと、そうしてきた。
これからも、そうしていくだけだ。
光秀 「ほう、いない、のか。
お前の顔にはありありと書いてあるがな。
だが安心しろ。駄賃はもらった、家康に言いはしない。」
一生懸命に感情を隠そうとする莉乃に、俺はいつものように微笑んで見せた。
意地悪な、いつもの笑顔を。