第33章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】徳川家康編
___くそっ、苛々する。
俺は城の廊下を早足で歩き、書庫へと向かっていた。
秀吉 「おい家康、そんなに急いでどこに行くんだ?」
家康 「書庫です」
秀吉 「そ、そうか。」
家康 「失礼します」
目を合わせずさっと横を通り過ぎる。
俺の『話しかけてくれるな』という気が伝わったのか、それ以上は何も言わずにいた秀吉さん。
書庫に入り、勢い良く戸を閉めた。
大きなため息をつきながら、椅子にどさっと腰を下ろす。
めまぐるしく頭の中を駆け巡る、先ほどの状況を整理するために。
傘下の大名が謁見している間、その娘である姫を城下に案内してやれという信長様の命令だった。
したくもない会話と、行きたくもない買い物に付き合わされている間・・・
突如背後から感じた視線が莉乃のものだと分かった途端、なぜか姫と一緒にいるところを見られたくない気持ちになった。
心のどこかで莉乃にこの状況を説明したい自分がいた。
『違うんだ、ただの仕事なんだ』と。
弁解する必要なんて全く無いのに。
やっとのことで姫の買い物から解放された俺は、莉乃を探した。
まだ城下のどこかにいるんじゃないかと思って。
そして・・・
やっと見つけた先で見たのは、光秀さんと一緒にいるところだった。
しかも、口づけまでしていた、2度も。
何を言ったかはよく覚えていないけど、その場からすぐ立ち去った。
それ以上、見たくなかったから。
莉乃と光秀さんは恋仲だったのか・・・
いつもからかう光秀さんとそれに応戦している莉乃を見ていたけど、そういう仲だとは気がつかなかった。
ああもう、何なんだ。
妙に苛々して頭にきて、悲しいような寂しいような。
胸が・・・詰まる。
・・・そうか。
人のものだって分かってから気付くなんて。
ばかだな、俺。