第32章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】明智光秀編
莉乃の世話してやることは、こんなに気分が高揚するものなのか。
秀吉の気持ちが少し分かる気がした。
・・・いや、あいつは誰にでも世話を焼く。
俺は___
「今日は宴だったんですよね、参加できなくて残念でした。」
光秀 「皆もお前がいなくて寂しがっていたぞ。
早く治してその呆けた顔を見せてやれ。」
「呆けたって・・・ あれ?光秀さん、首元・・・ 」
家康に掴まれたせいで、袷の部分がよれていた。
何も言わず、それを直す。
莉乃もそれ以上は何も聞いてこなかった。
俺は莉乃が黙々と箸を進める様子を見ていた。
先日もこうして莉乃が食べている様を眺めていたな、それを思い出すと笑みが浮かんでくる。
嘘や駆け引きの世界で生きている俺だが、莉乃といる時にはその必要がない。
正直に接してくる莉乃に対して眩しさを感じる事がある。
そして羨ましさも。
・・・その正直さに、俺もあやかってみるか。
光秀 「莉乃、先日の茶屋での話だが。」
「あ・・・まだ覚えてたんですか」
光秀 「あの答え、分かったぞ」
「えっ!?」
途端、赤く顔を染める莉乃。
箸に煮物のニンジンを挟んだまま、こちらを見て固まっている。
赤いのは熱のせいだけではなさそうだ。
先ほどの秀吉たちの様子から、かまをかけてみたが・・・
こうも分かりやすい顔をされると、逆に対応に困るな。
今までもこうだったのだろうか?
俺は気がつかず、周りの奴らには見えていたなんて。
なんと勿体ない時間を過ごしてしまったのかと、若干の後悔が募った。
光秀 「だが、お前の口から聞きたい。」
「それは・・・」