第32章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】明智光秀編
静まり返る広間。
誰もが酒にも食事にも手を付けず、黙ったままでいる。
口火を切ったのは政宗だった。
政宗 「光秀・・・
お前まさか本気で、気付いてない訳じゃないよな?」
光秀 「いい加減その遠回しな言い方をやめろ。
先ほどから何の話だか分からん。」
秀吉 「お前なぁ・・・莉乃はもうずいぶん前から___
家康 「『手出しは無用』ですよ、秀吉さん。」
家康が秀吉の言葉を遮る。
あのからかいで相当嫌われたようだ。
家康があんなに莉乃をかばっていたのは何なんだ。
三成 「光秀様は・・・莉乃様の事をどのように思われているのですか?
光秀様のお気持ちを聞く分には『手出し』には相当しませんよね」
光秀 「は? 莉乃をどう思ってるかだと?」
三成までもか・・・
光秀 「そのような事、考えたこともない」
と言えば嘘になるな。
現にあの日以来、莉乃の姿をよく思い浮かべる。
帰城するのが楽しみだったのも、莉乃の顔が見たかったからだ。
それをこいつらに言う必要はないだろう。
それに・・・
あの日過ごした小娘との時間が、思いの外、己に影響しているなど・・・認めたくなかった。
家康 「考えたこともない、ですか。
それでよく口付けなんかできますね。
じゃ、俺も先に失礼します。」
信長様に続き、家康も出て行ってしまった。
政宗 「これ持って行ってやれ。
あいつは夕餉、まだ食ってないはずだ。」
皿にいくつかの料理を盛り付け直し、俺に渡してくる。
秀吉 「茶も煎れてやれよ。」
三成 「お大事になさって下さい、とお伝え下さいね」
はぁ・・・
ここは大人しく従った方が良さそうだ。
光秀 「分かった。」
俺は皿を持ち、莉乃の部屋へと向かった。